父のロールケーキ

ku:nel (クウネル) 2008年 01月号 [雑誌]

ku:nel (クウネル) 2008年 01月号 [雑誌]

実家に帰ってきている。
ひざの上に毛布をかけてお茶を飲みながらまたじっくり読んだ。面白い。
とくに今日読んで良かったのは、炭焼きの仕事をしている豊島桐子さんという
女性の記事。
炭焼きの仕事は冬に行うので、冬場にこの仕事をするために、
夏の間ははアルバイトをしたり、農家の仕事を手伝ったり、という生活を
送っているというところを読んで、とても心が「くっ」となった。
すごくシンプルで、はっきりしている。
やりたいことがまずあって、それに沿っていくように物事があって、成り立ってる。
この記事を読んでいたら、とても気持ちよくなった。
自分にできるか、とかそういうことではなく、でも
すごくうらやましく、理想的な仕事をしているなあと強く強く思った。
なんというか、お風呂に入って体中きれいさっぱりになった、という感じ。



今日はダッフルさんと昼間に隣の駅にあるダイエーに初めて行ってみた。
外で古本市をしていたのでのぞいてみたら、ダッフルさんが「女王陛下のユリシーズ号」を
見つけたので、誰にともなく「面白いですよ!」とそっと言って、目立つ位置に置いておいた。


紅葉した木を見ながら、公園を散歩して帰った。
いちょう並木が続く道を歩いていたら、去年のことを思い出した。
引っ越してからちょうど1年が経つ。去年の今頃も、黄色く色づいたいちょうを見て散歩した。
ダッフルさんにそう話したら、


「なんだっけ。『いちょう通りの並木道』・・・?」


と言ったので、ははん、と思い


「『いちょう並木のセレナーデ』、でしょ」


と言った。去年の今頃、いちょう並木を歩いているときに、そういう歌があることを
ダッフルさんに教えたのだ。それを思い出してくれたらしい。でもタイトルはうろ覚えだったらしい。
ほのぼのした。


小沢健二の歌の中で何がいちばん好きなの」


ときかれたけれど、ありがちだが考えれば考えるほどわからない。
だって例えばアルバム「LIFE」でだって、最初に「愛し愛されて生きるのさ」があり、
次に「ラブリー」がくる、そして・・・っていうありかたが好きで、安心する!
ひとつひとつがそこにあることがとても良くて、どれがなんて言えない。
人の作った曲なんて、本当にタイミングというか偶然というか、いろいろなことの
重なりで出来上がっているだろうに、そういうものたちをひとつも動かしたくないくらい
大事に思えるっていうことを考えると、ほかのすべてのものたちも、
例えばうまくいかないことも、納得できないことも、不安なことも、普通の毎日のことも、
1つ1つがこれでいいんじゃないかって思えてくる。そういうことなんじゃないかって思えてくる。


なんだか全然うまく言えないけど、今日電車に乗るときにふとそう考えた。
そしてそのときに「愛し愛されて生きるのさ」を聴いていたけれど、
もしかしたらこの曲がいちばん好きかも・・・とちょっと思ったりもしたのであった。





それから、クリスマスに何が欲しいかという話題になった。
私は欲しいものをきかれて答えるのがあんまり得意じゃない。というかうまく考えられないのだけれど、
前からほしいと思ってたものをちょっと小声で言ってみた。


「かもめ・・・食堂の・・・DVD・・・」


と言ったら、きこえなかったダッフルさんが聞き返した。


「え? か・・・?」
「かもめ・・・食堂・・・」
「え? カゴメ食品・・・か」
かもめ食堂!の・・・!DVD・・・」
「え?」
「かもめ・・・」


というやりとりをしばらく繰り返した。
カゴメ食品」で一度納得していたらしいダッフルさんだったが、もしそうだったら何をくれるんだろう。
とにかく、伝えることというのは重要だ。



実家に帰ってきたら、夜はすき焼きだった。
父と母と3人でおいしく食べた。
去年の今頃の日記を読みかえしてみたら、私が引越しをする前日の晩御飯も、
この3人ですき焼きを食べたのがわかった。
あれからもう1年だ。


母が好きながばいばあちゃんの映画がやっていたので、少し見た。
中学生のとき(?)の役のあの少年がとても良かった。
最後のマラソン大会のときの場面がとてもとても良かった。


ダッフルさんから


「筑紫さん!」


というメールが入ったので、チャンネルをまわしたら23に筑紫哲也が出ていた。
母に
「また筑紫哲也が出てるよ。元気そうでよかったよ」
と話しかけても、買ったばかりらしい化粧品を見ていて、あまり応じてくれないので、
「なんでそんなに淡白なの」
と言ってみたら、
「今日ファンデーション買ったから忙しいの」
と言われた。

ともかく筑紫哲也が見られてよかった。



背番号30番女史の家にいったときのこと。
尻高女史と、そろそろ帰ろうかという感じで少しまったり話しているとき、
背番号30番女史が犬たちに向かって
「ほら!営業して! 次につなげるんだよ! ルート営業だよ!」
といって、犬たちを私たちのところによこしていたのが笑えた。
またこうして遊んでもらって、散歩してもらいなさいということなのだが、
意味もわからず私たちにじゃれついていた犬たちが営業マンに見えてかわいかった。
また行くからね!


夜、Salyuの「TERMINAL」を聴く。
これは引っ越してから買ったIpodに初めて入れて、しばらく通勤時に聴いていたので、
あの頃のことを少し思い出した。朝という気がする。
引っ越したてで、まだ少し緊張していた慣れない日々と、朝の冷たく寒い空気を
思い出して、ちょっとしゃっきりする。あと切ない感じがする。


とにもかくにも1年。


母がパン焼き器で、レーズンとさつまいもが入ったパンを焼いてくれて、
焼きたてを食べた。おいしかった。


アンカー展にとても行きたい。エルトゥールル号回顧展にも行きたい。
ブルーノ・ムナーリ展にも行く。