秋の空の色


先週、損保ジャパン東郷青児美術館でやっていた
モーリス・ドニ展― いのちの輝き、子どものいる風景」を
見に行った。

ドニの、子どもや家族をモチーフにした作品を集めた美術展。
産まれたばかりの赤ん坊や、楽しそうに遊ぶ子どもたちの絵、
子どもをお世話する母親の絵がたくさん。
赤ん坊は、どの絵も丸々太っていた。
「赤ん坊って、こうじゃなくっちゃ!」
と思う。

肖像画の形式の絵もよかったけれど、スナップ写真のように
子どもや奥さんのふとした瞬間を描いた絵がとても良かった。
いろんな手法を試しているのに、一貫してモチーフに家族を
描いてた。家族を描くことを評価されなくても描いた。
評価されるされないは別として、なんとなく庄野さんの作品
に対する姿勢と通じるものを感じた気がした。


色と光がとてもきれい。


大きなお腹で、しかも1人で見ている人は私だけだった。
(そりゃ、あんまりいないだろうが・・・)
あの人、きっと胎教に良さそうだから見に来たのかしらと
思われたかもしれない。たしかに、とても居心地の良い
空間だった。
見に行けて、本当によかった。


この日は雨振りだった。
この美術館は新宿の損保ジャパン本社ビルの42階にあるのだが、
一度エレベーターで降りてから、傘を忘れてきたことに気づき、
また42階までエレベーターで上がって、取りに戻った。
42階と1階の間を行ったり来たりする妊婦を、ビルを透かして
見たらさぞ面白い光景だろうなあと思う。
エレベーターの案内の人も、妊婦が何度も現れるから驚いたと思う。
この話を帰ってからダッフルさんにしたら、
「階段で!?」
と言っていた・・・。
この美術館は、好きな作家や見たいと思う展示が多くて、
学生時代から何度か通った。今度行くのはいつになるだろう。


お母さんが赤ちゃんを抱いているポストカードを購入。
冷蔵庫に貼っている。
赤ちゃんは、まっすぐ正面を見てちょっと笑っている。
ダッフルさんがそれを見るたび、
「こっち見てる・・・」
と言うので可笑しい。

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美術展を見に行った翌日だが、検診で絶対安静と言われ、
その日の午後から、突然の自宅で安静生活に。
前日長時間歩き回っていたので(デパ地下とか行った・・・)、
本当にびっくりした。そしてヒヤッとした。
Aちゃんの家に遊びに行く約束をしていたのだが、急きょキャンセル。
やさしく了承してくれて本当に感謝。


もともと胎盤が低めだったのだが、「血管が豊富にある」
(という先生の言い方)そうで、初産ということもあり、
念のため安全を考えて帝王切開になることに。
年末に出産予定だったが、早ければ今月末か、来月上旬には
赤ちゃんの成長を見て手術することとなった。
思いがけず、早く赤ん坊と対面することになりそうだ。
それまで、なるべく横になっていること。そういう指示。
ということで、今週からほぼ横になる生活を送っている。


実家の母が1日休みをとって、掃除に来てくれた。
私の汚い部屋を見て、ひたすら片づけてくれた・・・。
隣りの部屋で横になっていたら、
「ガムテープどこ」
とききに来たので場所を教えると、その後ずーっと長い間、
ペタペタペタペタペタ・・・・・と、ゴミをはがす音が
きこえてきて、忍びなかった・・・。
そして突然上着を着出して、
「ちょっと、枕カバー買ってくる。汚すぎて」
と言われたので、あわててきれいな枕と枕カバーを出して
事なきを得た。本当にあきれているようだった。
ごちゃごちゃしていたテーブルも片づけてくれ、
夕ご飯も作って一緒に食べてくれた。本当に感謝。


ダッフルさんがお皿を洗ってくれたのだが、所定の場所に
スポンジを置いていないのを見て
「あ、置いてないね・・・」
と私が言うと、
「そんなことは、この家全体から見たら本当にちっぽけな問題だ・・・」
と母が遠くを見て言っていたのがいちばん印象的なことだった。


無事出産したときには、きっとダッフルさんの両親も来てくれると
思うのだが、この状況では絶対に迎えられないな・・・と最近まで
思っていたが、こうなった以上、もう諦観の域に達している。
汚い部屋を見せることに関しては、非常に平安・穏やかな感情に
なっている自分がいる・・・。


明日の検診で、入院や手術日が決まる。
即日入院の可能性もあるので、準備はしておいた。


今朝、母親学級で一緒だった方から、無事出産した報告メールがきた。
当日の状況を臨場感たっぷりに克明に書いてくれてあって、ドキドキした。
赤ちゃんの写真はとてもかわいかった。
やっぱり陣痛は、赤ん坊の顔を見ると忘れてしまうものらしい。
そして返事を書いていたら、別の妊婦さんから
「私はまさに今陣痛中です・・・」
とメールが来る。興奮した。
みんなで応援メールをする。
いよいよだなあ。


みんな無事に生まれて欲しい。
みんなかわいい赤ちゃんと対面して、辛さを何もかも忘れてほしい。
ただ、私の赤子よ、もう少しの間お腹にいてほしい・・・。
胎動も、もっとまだまだ感じていたい。


赤ん坊はよく動いている。
毎日しゃっくりをしている。
昨日はダッフルさんがお腹に手をあてているときに
ブルンブルンと大きく動いて、
「わ!何!? 今のどこの何!?」
とダッフルさんがパニックになっていたので笑った。


心配なことももちろんあるが、
太らないようにとか、お腹が重くて苦しくてとか、
産むまでにあれしなきゃ、これはやっておきたいとか、
どうしようあれ、とか、そういうことからすべて解放されて
お腹の子に話しかけたり絵本を読んだりすることくらいしかない
状況になったので、心が少し落ち着いている気がする。
応援してくれている周りの人々と、ダッフルさんに、
それからお腹の子にも、感謝している。ありがとう。
あとは無事に産んで育てるのみ!