ハレルヤ

アン・サリーの歌う「Allelujah」がとても好きだ。
この曲だけで、曲というよりも何かひとつのもの、という感じがする。
この夏、職場での昼休みによくベンチに座って木や歩く人たちを
見ながら聴いて過ごした。
真夏だったけど、全然暑くなくて、涼しく気持ちよかったのを覚えている。
頭の上には銀杏の木が青々と屋根をつくっていて、足元には
ラベンダーがそよそよ揺れていて、とてもきれいだった。


風が強いせいもあって、今頃は寒そうだ。
もう少しして紅葉が進んだら、きっときれいだろうなあと思う。
そのときはまた、音楽と一緒に。

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水曜日。
部署異動で新しく移ってきた方の歓迎会。
お好み焼きともんじゃのお店へ。
小さなお座敷に7人で集まり、おしゃべりしながら
おいしい食事をいただく。特になんていう名前か忘れたが
ものすごくおいしいホルモン焼きを食べた。おいしかった・・・。
牡蠣やイカ鉄板焼きも絶品だった。ニコニコする。
もんじゃもお好み焼きも何もかもおいしかった。
何も作らず手伝わずだったが、少しの出費だけでごちそうしてもらった。
どうもありがとうございます! とても女性を優遇してくれる会社だ!(?)
ひよこ女史と、少し歩いて帰る。酔っ払いながら、お互いをモーレツに
褒めあいながら。


電車に乗ろうとしたら、ダッフルさんと偶然近くにいることがわかり、
待ち合わせして一緒に帰った。たくさん喋った。

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金曜日。
待ちに待った週末で、会社を出るときに感慨深くなった。
月火水木と待ち遠しく思っているくせに、この瞬間はでもなぜか
いつも淡々とするものだ。
夜は鍋にした。
ポン酢に、京都で買ったラー油をたらしたらおいしかった。
鱈や春菊にとても合っていた。
鍋は、昆布で出汁をとったが、いまいち。反省した。


ダッフルさんは岡山に泊まりで朝早く出て、日帰りだった。
ままかりと、じゃこ天をお土産にくれた。
感激して食す。おいしいくて喜ぶ。

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土曜日。
いよいよの面持ちで、「沈まぬ太陽」を観に行った。
前の会社を辞めた頃だったろうか、実家にあった母の本を
借りて、仕事をしていなかったこともあり一気に読み進め、
読んでいる途中に映画化のことを知り、観に行きたいと思っていた。
とにかく長い作品は、登場人物と親しくなる。
だからこの映画化も、感慨深いものがあった。
ダッフルさんは、本が出た当初に読んでいたとの事で、
一緒に観に行った。


とにかく胸がいっぱいになった。
そして、3時間半の長丁場だったけれど、5巻ある原作を
よくまとめたと思う内容だった。
しかし、本を読んでいかなければ、私などは難しい部分は
とても理解できなかったろうと思う・・・。
細部も含めて、やはり原作ありきの映画で、また原作へ戻っていく
映画だろうと思う。でも、あの世界が映像化されたことが本当にすごい。
映像の力って本当にすごいんだ、と思うことが多かった。
簡単な言い方だけど、本当に胸が締めつけられる。

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ところで、3時間半の長い映画を、どう見るか。
映画を見ている間に腰が痛くなることがある私は、
頭を悩ませていたことだった。
10分間の中休憩が入るとはいえ、2時間弱の映画でも
足から腰にかけてしびれが出てしまうことがあるので、
とても不安になってしまった。
大事をとって、いつも行く大きな駅の大きな映画館はやめた。
あの映画館に行くまでの喧騒と、混雑と、古めの映画館の椅子に
恐怖を覚えたため。
初めて行くが、家から30分ほどで着く場所にある
小さいが新しい映画館に足を運んだら、とても良いところだったので、
「今度からここに来ようね!」
とダッフルさんに呼びかけたほどだった。


椅子もひろびろとしていて、働いている人も親切で、
食べ物も豊富でおいしかった。
周りに緑があってくつろげた。
腰もなんとか持ちこたえた。
ブランケットも忘れずに借り、冷えも万全。良かった。
水筒に入れていったコーヒーを、ラスト近くにダッフルさんと分け合って飲んだ。


帰りは、散歩をして帰った。
ダッフルさんが学生時代にバイトで通っていた地域という
ことで、感慨深かった。


歩きながら、鯛焼きを買って食べた。
なぜか小倉餡ではなく、栗餡という企画物を買ってしまう。
小倉にすればよかったか・・・と思うが、温かくておいしかったので満足。
食べながら歩くということが、おいしくさせたのであった。
不思議な食べ物。鯛焼き。「出来たて」と「歩きながら」と「外で」が
おいしくさせる食べ物。




ダッフルさんなどは、「ジャーマンポテト」なんていう
鯛焼きを頼んでいた。


夜は、ダッフルさんが昨日の鍋の残りで
おじやを作ってくれた。万能ネギをたっぷりかけて食べた。

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今日は、ダッフルさんは床屋に行き、後は家で仕事という、
ハードで合理的な感じの1日を過ごしている。
私は、ダッフルさんの部屋の押入れの整理を試みた。
引っ越してきて以来、カオスと化した芸術的な押入れ。
自分の部屋も同じようなものだが、それはそっちのけで
他人のカテゴリーを片付け始める私であった。
ダッフルさんの着ていない服などを次々に捨て始め、
中のものをどんどん部屋に出し、Tシャツや靴下の入っているゾーンを
ちまちまと片付けただけで、力尽きて無言になってしまった。


仕事をしているダッフルさんが、すっかり物音のなくなった
自分の部屋に戻ってきて、様子を伺いに来たくらい、動作を止めていた。
結局、出したものを元に戻して強制終了した。
しかし、捨てるものは捨てるものとして分けた(途中まで)ので、だいぶすっきりした。

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でも、私はどうやらマイナスの面に注目してしまうたちなので、
他の部屋の掃除や、洗濯などができなかったことに落ち込んでしまった。
私はコップに半分入った水を、
「半分しか残ってない」
と思うタイプらしいのだ。
「今日は開かずの間だった押入れに手をつけられたなー!」
って思えたら、きっと全然世界は変わるし、何より楽しいと思うのだ。
ダッフルさんは本当にそういう人で、
「なんかすっごくきれいになったなー!」
と言いながら、またべつの部屋へ、仕事に戻っていった。
そして今でも仕事をしている。

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映画を見た帰りのバスの中で、他人の話を盗み聞きしてしまった。
何かの集まりで出会って、親しくなった女性2人の話で、
1人は子連れのお母さんと、1人は若い女性だった。
若い女性は彼氏と同棲中とのことで、お互いどういう人がいいかという
話になっていた。そしてどちらも
「うちはダンナが洗濯も掃除もやってくれる」
「あ、うちもそうです、ささっとやってくれちゃうんです」
と言って、少しお互いの旦那さんを自慢し合っていてかわいかった。
やっぱりそれぞれの大事な人を本当に好きなんだなあと思って少し
幸せな気持ちになった。


ダッフルさんは、最近ページにサイコロの絵が入っている本を
電車やバスの中で熱心に読んでいる。
アドベンチャーゲームブックというものらしい。
よく小さい頃読んでいたので懐かしくて、古本屋で求めたという。
あらかじめサイコロを使って力量の点数をきめて、
あとはページの指示通りに進んでいくらしいのだが、
ダッフルさんはサイコロを振ったことにして読んでいるらしい。
展開によって、いろんなパターンのストーリーができるのだという。
そんな本をまったく知らなかった。
ダッフルさんの読んでいる本は宇宙ものらしく、
冒頭に


「君は宇宙船トラベラー号の船長です。船そのものは君の星の
 宇宙艦隊の誇りです。武器と防衛装置は艦隊でももっとも進んでいて、
 乗組員も一流ぞろいです。」


と書いてある。楽しそうだ。
ダッフルさんは、しかしちっともクリアできないと言っている。

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今日ダッフルさんがパソコンの前で仕事を始める様子を
ぼーっと眺めていたら、ペンケースから鉛筆を取り出して
資料に書き込みを始めたからなんとなくジーンとした。
鉛筆・・・。