生きる懐かしさ

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庄野潤三さんがお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。


産経新聞(9月30日付)に、文芸評論家の饗庭孝男さんの
追悼文が掲載されていたのを目にした。
そこでは、庄野さんについて


「生きる智慧とは日常の経験を深め、生と死の簡明な事実を直視し、
 人生の一回性を悲劇ではなく『生きる懐かしさ』によって
 とらえることにある、と見た作家であった」


と評している。心に残った。
庄野さんは『夕べの雲』という作品のあとがきで


「『いま』というのは、いまのいままでそこにあって、たちまち無くなって
 しまうものである。その、いまそこに在り、いつまでも同じ状態で続きそう
 に見えていたものが、次の瞬間にはこの世から無くなってしまっている具合
 を書いてみたい。」


と書いている。
暮らしの中のなにげない出来事、子どもたちの会話、庭や散歩道のこと、
虫や小鳥たちのこと、おいしい食べ物や、大切な人たちのこと、花のこと、
感じて、触れて、味わって、ほほ笑んだその瞬間から、すでに「懐かしいもの」へと
刻々と姿を変えていくものたち。
自分の人生を、毎日の暮らしを、一瞬一瞬を、好きな物事を、
「懐かしい」という観念で見つめながら(それがついこの間のことでも、何十年も前のことでも)
二度とないのだと思いながら過ごしていくこと。
私はその考え方に、強い決心の文体に、本当に心から驚かされ、そして何より励まされてきた。


庄野さんの本に出合えて本当に幸せだと思っている。
大学時代に庄野さんの本の感想を書き始めてから、たくさんの素敵な
読者の方々とネットで知り合えた。嬉しいことだと思う。
これからもずっとずっと読み続けていく。

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庄野さんが亡くなったと知ってから『夕べの雲』を読み返していた。


この本の中の『山芋』という話の中で、こんな言葉が出てくる。


「『いつか、そのうちに』というのは、われわれの生活でよく出てくる言葉である。いつか、そのうちに果たしたいことが、誰にもある。それも、考えただけで億劫になるようなことではなくて、もしいますぐやろうと思えば、やれることである。
 ただ、いますぐやらないで、『いつか、そのうちに』と考えるのは、それがさし迫ったことではないからだ。今日、それをしないとどうかなるということではなくて、ひと月先でも半年先でもいいし、来年になっても別に差し支えはない。そうかといって、あまり先へ延ばすのもよくない。
 そこで、『いつか、そのうちに』ということになるのだが、物事はいつまでも同じ状態で待っていてくれない。大浦が掘りに行くつもりでいた『森林の道』のじねんじょのように、相手の方がいなくなってしまうこともある。そうして、この世でわれわれが知り合うもので、いなくなってしまわないものはない。」



大学生のときに読み始めて、ずっと感想の手紙を書きたいとおもっていたのに、
いつかと思っているうちに、お送りすることができなくなってしまったことを
後悔しながら読み進めていたので、この言葉でハッとしてしまった。
本当にそうだ。本当にそうなのだ。


9月28日、お別れの会に参列し、やっと書いたお手紙を
受付の方に手渡した。

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生活のこと。

お昼のためにお弁当を作り始めて1ヶ月。
私の人生の中で、最長記録である。
もちろん、ダッフルさんの分も。節約だ!


今日は、実家からもらってかえった蓮根できんぴらを作った。
夜はさんまを焼いたが、すだちをしぼって食べたら心からおいしかった。
さんまっておいしい。


今年はおばあちゃんの育てた栗で、栗ご飯を3回炊いた。
あと1回できる。
本当にほくほくの栗。ありがとうだ。
それから、おばあちゃんの里芋もある。今日はおみそ汁にした。
おばあちゃんの里芋は、本当にもっちりほっくり甘くてうれしい味だ。
大好きである。

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尻高女史からメール。
大学院の進学試験に合格したとのこと!本当にすごい!
喜んだ。
「自分で選んだことだから、くいなし!」
と言っていた。
毎日の小さなひとつひとつの決断を、自分で良かったなって思えることができたら、
くいなし! って思える人生になるよね、という話をメールできく。
尻高女史に心からの祝福を送る!

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毎日のことを、どんなことでも大事にしていきたい。