直角

マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)

マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)

図書館で借りてきた本。
読もうと思っていた本の中でこの本が紹介されていたので、
なんとなく手に取ったのだが、ぐんぐん読まされた。


1人の女の子の日常の世界と、夢の中で体験する世界と、
どちらもそれぞれ1つの家とその狭い周辺の中だけで進んでいく物語なのに、
めまぐるしくて、先が気になって、
不思議な気持ちと、怖い気持ちと、自分まで疲れてくるような肉体描写と、
物語の運び方と、その広い世界に圧倒される。


病気にかかって、毎日寝て暮らしている女の子「マリアンヌ」の
夢の世界と現実との不思議な行き来の中で、どちらの世界でも
物語の進行とともに成長していくのだが、その過程がとてもいとおしく思う。
もう1人の登場人物「マーク」との会話の文体がとてもいい。


「チキンを食べるにはこれにかぎるわね。」
マリアンヌはチキンの足をかじりながら、満足そうにいった。
「あたし、ナイフやフォークを使うと、うまく食べられないのよ。あなたもう食べないの?」
「うん。」
「あんまり食べないじゃない。」
「おなかすいてないんだ。」
「すいてるって、いったじゃないの。」
「すいてるって、思ったんだよ。でも食べはじめてみたら、そうじゃないんだ。
 思ったほどすいちゃいなかったのさ。」
「ほかのものはどうなの、バナナかなにか?」
「ほかになにがあるのさ?」マークはだるそうにいった。


こういう日常的な会話のやりとりが、非日常の夢の中で、しかも大きな恐怖に
取り巻かれて行われている不思議さ。
でもなんとなく、ほのぼのしたりもする。2人の会話が好きだ。
猪熊葉子さんの訳の力だろうか。
あと、2人がよくケンカするのも楽しい。子供なのに、夫婦ゲンカみたいで少し笑う。
マリアンヌはヒステリーで、マークは勢いに乗ってすぐ馬鹿にしてしまう。
女性と男性の心理というやつか・・・。


マリアンヌは10歳。
その頃、こんなふうに世界に怖さがあることと、怖さを持つのは自分だけじゃないのだということを、
物語を通して思うことがあったら、どんなふうに読んだのだろうか。
それから、全部が全部思う通りにはいかなくて、それは時間がかかったりいろんな都合が
あって、うまくいかないこともたくさんあって、
それをやりすごしたり、元の楽しい気持ちに戻すには、結構大変なんだということと、
自分の気持ちを悪いほうに持っていくことは、良い方に持っていくよりも
簡単なんだということも、頭ではなく心ではわかってくる頃なのだという気がする。


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話は変わって、今の職場で一緒に働いているメンバーは、
30代半ば、30代前半、20代後半(私)、20代半ば、という女性たち。
この間、雑談中にアニメの話になり、それぞれ見ていたアニメなどが
異なって面白かった。


20代半ばのひよこ女史は、セーラームーンを見ていたと言ったが、
私は「小さい頃に見ていたアニメはセーラームーン」と言う人は、
ぐんと自分より若い、次の世代という気が自分の中でするので
(なんとなく。私も小学生のときで、原作の漫画は読んでいたのだが・・・)
いつも仕事を教えてもらっているひよこ女史が遠くにまぶしく見えたのであった。


アニメ話にひとしきり花が咲いたあとで、テレコ女史が一言、
「角を直角に曲がるっていう侍のアニメあったよね・・・」
と言っていて、すごく気になった。
タイトルは覚えていないとのことであった。


「それめちゃくちゃ気になります。調べます」


と言ったが、結局よくわからない。
おれは直角」のことかな・・・。


ひよこ女史が帰り際に
「モチコさんは、チンプイ知ってますか?」
と言ってくれたのが可愛かった。
しかし見ていなかったので、
「知ってる・・・けど見てなかった・・・」
としか言えなかった。
惜しいと思う。



30代半ばのくしゃみ女子が
「知ってる! ネズミみたいなやつでしょ」
って言ってたのがなんとなく和んだ。

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熊本旅行の写真で、写真集を作った。
おばあちゃんに送ったのと、母にもあげた。
母は喜んでくれたらしく、泊まりにいった土曜日には、
頻繁に手にとって眺め、自分の顔と洋服のことに頻繁に言及していた。


作ってよかった。