みずうみ

みずうみ

みずうみ

なんとなく、なんとなーくすごく好きだなあと思った本。


懐かしいとか、切ないとか、悲しいとか、楽しいとか、
今まで思ってきた感情のどれでも処理できない感情で読んだ。
それは、本屋さんで、この素晴らしい装丁を見たときから、
手に取ったその重みから、紙の質感から、
そういうところからもうスタートしてた感じだ。


それで、全然知らない人たちの人生とか、考えとか、
そういうことを見ている感じがした。


他の人たちは全然知らなくて、それぞれの時間で過ごしてるのに、
好きになって、一緒にいる人だけが知りたがって、知り合うような。
そうしたら、それぞれの世界をそれぞれ垣間見て、
2つの世界が双方向で知り合う感じ。


それでお互いがあったかくなれるなんて、
小さいけれどすごく頼もしいことだなあ。


「あの人がいるところが、私にとっての帰るところ。なので、私は一日何も考えずにいられる。これからどうしようかとか、そういうことを。」




それから、私は主人公ちひろの、仕事をしている場面がすごく好きだった。
毎日体を使ってもくもくと、壁画を描く仕事。
夕方頃、ちょっと休憩して魔法瓶のコーヒーを飲んだりするところが
とても良かった。私もああいうふうに仕事がしたいと本当に思う。
休憩の時間を、本当に休憩で過ごせるような、そういう仕事。
仕事の時間と休憩の時間の、頭の使い方が違う仕事。




そして、中島くんのもち網の場面では本当に悲しくなってしまったのだった。
その人がその人のやり方で、その人の大変を何とかしようとしている場面が
私は本当に弱い。本当に愛おしくなる。



「でも、僕の人生は確かにある。ゆがんでいて、へとへとで、罪悪感に満ちた弱々しいものだけれど、なにかしらがそこにある。それはいつだって僕の感情を超えたすばらしい何かなんだ。」




それぞれの人がそれぞれの世界をくっつけあって、それぞれの世界で
感じたり見あって、
うそじゃないことを言ったりして、気に入ったりホッとして
みんな幸せでいたらいいなあと思うな。



そしてミノくんの紅茶の見事な「おいしそう」さだ。