ムーミン谷の仲間たち

ムーミン谷の仲間たち (講談社青い鳥文庫)

ムーミン谷の仲間たち (講談社青い鳥文庫)


とにかく全部がいとしいよ。

ムーミン谷のお話は本当に本当に言葉にできないな。
年々、思ったことを言葉にできなくなっている気がするけど、
そういうのも超えて、本当に言葉にしたくない感じだな。


ここに書いてあるムーミン谷の人々の、
1人1人の不安や心配や悩みや欲求の、小さいかわいい物語たちは、
まるで自分のことだ、というふうな簡単なことも言いたくないくらい。

「わかるわかる」

とかそういうことでもなくて、自分の中身で味わうので、
ちょっと苦しい。でもだから、同じように道がひらける感じ。


そうして、すごく静か。
ムーミンのお話に重要で、いちばん大切なのは、この「静か」ということだと思う。



このお話は、ムーミン谷に住む人の中の何人かを、それぞれ主人公に
した短編が9つ収まった本。
春のスナフキンのお話から始まって、夏、秋、そしてクリスマスの
お話で終わる。

最後、はい虫が主人公のクリスマスのお話が読みたくて手にしたのだけれど、
それまでのお話もとてもとても良かった。読んで良かったと思う本だよ。


とくに、フィリフヨンカのお話は、本当に興奮したのだった。
会社のお昼休みに1人でスタバでコーヒーを飲みながら読んだのだけれど、
本当に心の中のいろいろなものがガラガラと音をたててはがれ落ちて
いくような感じがしたよ。

答えを見つける道を自ら導いてひらけた人を目の当たりにするのは、
とても恐れ多いことだけれど、すごく気持ちのよいことだなあ。
ドキドキドキドキしながらコーヒーを飲んだのだった。



小さいホムサの話は自分の小さい頃を容易に思い出させたし、
ヘムレンさんはまるで自分の大学時代みたいだったな。




最後のクリスマスのお話は、まさに今日のクリスマスイブに読んだのだ。

いつも冬眠していて、クリスマスを知らないムーミン一家が、
たたき起こされて初めて過ごすクリスマスの1日。

クリスマスに何をするべきなのか、大事なことを教えてくれるお話。


はい虫の家族がかわいくてかわいくてねえ・・・。

私もこのはい虫の家族みたいなクリスマスを過ごしたいよ。
そしてムーミン一家が、また心置きなく春まで冬眠できるように祈るよ。



好きな一言がたくさん出てきたけれど、
ムーミンパパがニョロニョロを見て言った一言がすごく好きだったよ。


「長い白いくつしたにいちばんにてるな。」



愛すべき愛すべきムーミン谷の住人たち!!!
これからも読むよ。たくさん読むよ。




「ところがいまは、ぼく、一個の人格なんです。だから、できごとはすべて、なにかの意味をもつんです。だって、それはただおこるんじゃなくて、ぼく、ティーティ=ウーにおこるんですからね。そして、ティーティ=ウーであるぼくが、それについてあれこれと考えるわけですからね。 ―ぼくのいうことが、わかりますか。」