王国その3 ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園


なんでこんなに辛いこと書くんだろうって思う。
すごく狭いところを、体を痛くして通るような。


例えば終戦記念日の日だけ、戦争のことや亡くなった人々や
それをくぐりぬけた人々のことを考えて心を痛めたりするような、
例えて言うとそういう感じになる。


そうしたい。私はそうしたいと思う。
痛いけど、すごくわかることを書いているし、
読むべきことをちゃんと書いている。

それに、ちゃんと感じることができるように
幸せの瞬間とか、目に見えない大事なものもちゃんと書いている。
本当に小説だ。



「手放したものの分、スペースは確実にできている。それに目を向けることさえできれば、もうそこまで何かいい香りのするものはやってきている。」


1つ1つの言葉が強い。
考えていることを、思い通して確立したことを、届く言葉に直している。
だからちゃんと届く。濁ったり、柔軟に形を変えて受け止めさせたり、
そういうことが決してない。



私が大好きな1文。


「温かい手をつなぎあい、ほろよいかげんのふたりは幸せな思い出を作っていた。今、ここで作っていて、この楽しさが過去までをも照らしている気がした。もっと光って、もっとさかのぼって照らしてほしい。この暗い山道を。」



落ち込んだときに通り抜けるせまーい岩の隙間みたいなところで、
見えるものと、見なくちゃいけないことと、見つけるものと、
そこをくぐり抜ける体と痛みだ。


すごくわかりやすく、そういう気持ちを思い出させてくれる。
そして、落ち込んだときはちゃんと見なくちゃいけないことも学んだよ。


それにしてもこの人たちはこれからどうなっていくんだろうなあ。
こういうふうに何人かの人たちを何年も見守っていけることが、
リアルタイムで連作を読める嬉しさだ。
親しくなる。