へそもち

画集 赤羽末吉の絵本

画集 赤羽末吉の絵本

7月に、練馬のちひろ美術館
「生誕100年 赤羽末吉展−絵本は舞台だ!」を見に行った。


本当にすごかった!
絵本のための絵の仕事を原画で見ると、いつもその繊細な感じに
驚くのだけれど、赤羽末吉さんの絵は、またとんでもなく繊細だった。
『かさじぞう』の雪国の世界みたいに、あまりの繊細さに、
しゃわっと溶けてしまいそうだった。
でもすごいエネルギー。


絵本でこういうことをしてみたいんだ、こういう絵本を作りたいんだ、
この国やその土地のそのままを、こうやって表現したいんだという気持ちが
強くて、それが溢れてしまっているようだった。
絵本の仕事をしようと思ってくれて本当に嬉しく思う。
日本の宝・・・と感謝しながら見てまわった。


『かさじぞう』、『だいくとおにろく』、『スーホの白い馬』、
『ももたろう』、『つるにょうぼう』、そして『おおきなおおきなおいも』・・・
小さいときに読んでいた絵本の中の絵そのものをたくさん見られて
とにかく嬉しかった。
(『おおきなおおきなおいも』の絵を見たときは、小さい頃の自分に
「みたよ・・・」と語りかけた。この絵本を見て、おいもの絵の塗りつぶし加減に
「絵本なのに、本当に目の前にある絵みたいに塗ってあるように見える・・・」
(こう思ったわけじゃなくて漠然とだけど)と不思議に感じたことを思い出した。
そしてそのぬりつぶし加減を本当に見た。これは5歳くらいの自分に
報告しなければならない。
そして、実物はとても細かくてやさしい仕事だったよ。修正もたくさんしてあったよ。
見れて嬉しかったよと報告したい。)

(ついでに5歳時代よりのソウルメイト?、友人Mにも報告したい。
 というか先日した。報告というか自慢であった)


そういう人がきっとたくさんいたのだろうと思うだけですごいことだ。


中でもいちばん心が騒いだのが『したきりすずめ』で、ああやって
小さい頃読んでいた絵本の絵に出合うと、ジグソーパズルにぴたっと
はまるように、ひざこぞうを打ちたくなるような気持ちになる。
たぶん、そういう形の穴が本当に心にあくんだと思うほどだ。
「そうそう、それ!」と思う。
その瞬間にだけ、穴がぱちっと埋まる気がする。


いちばん心に残ったのは、展示のいちばん最初にあった、
雪国の人々を題材にした大きな絵。タイトルは失念してしまったが・・・。
あの絵を見た瞬間、ああよかった!と思ったのだった。
「心が熱くなる」とは、ああいう瞬間だと思ったのであった。


なんだか感想がうまく書けなかったけど、本当に心から
楽しんだ。上記の画集も買って帰った。
この日の夕食はカレーライスで、煮込み→かきまぜ→煮込み→かきまぜ
の「煮込み」の部分のたびに、この本を開いた。案の定カレーがちょっとついたが(買って当日に・・・)、
「良い記念になるわい・・・」
と思うほど心が豊かな日であった。

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館内のカフェでいただいた、期間限定の「へそもちセット」。
『へそもち』という絵本にちなんでいる。
胡麻餡。
サンザシとナツメが添えられている。
ほうじ茶を頼んだら、黒豆がついてきた。


この日は1人で(絵を見るときはいつも1人)、かなりのにやつき度で
へそもちの写真を撮る女の光景は、さぞかしなものだったろうと思う。
とても幸せな時間であった。おいしかった。


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『私の絵本ろん 中・高校生のための絵本入門』という
赤羽末吉さんの本は、とても面白いのでおすすめだ。
ホフマンの『七わのからす』についての松岡享子さんの評論についての、
画家の目から見た評論は、目からウロコだった。


赤羽末吉さんの遺作は、すべてちひろ美術館に寄贈されているらしい。
なんとなく安心する。
またいつか見て、そのときの自分が今の自分に語りかけてくれると、
たぶん面白いと思う。