八甲田山死の彷徨

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)


茶店においてあった「週刊地球旅行」のアルプスの刊を
見ていたら、スイスのクライネシャイデックというところに
記念碑があり、そこに

「アルプスを愛した日本の作家 新田次郎ここに眠る」

と書かれているということを知った。
一緒にいたダッフルさんに話したら、
新田次郎なら本を持っている」
とのことで、貸してもらったのがこの本。


八甲田山でこんな悲惨な遭難事件があったこと、
全然知らなかった。震え上がって読んだ。

生き残った五聯隊の兵士が、英雄ともてはやされて、
やがてお酒におぼれて、奥さんに去られて、
町の居酒屋で若い男に

「なんだい、八甲田山の生き残りっていうのは」

といわれていた。

そこのところは、自分も含め、なんというか、
なんともいえないものだった。
ハッとするというか、それがすべてなのだろうか、というか。


「靴下を2枚重ねて履き、その上に唐辛子をふりまき、足を油紙で二重に
 包んでから雪沓を履く」

っていうところを何度も繰り返し読んでいたい感じだった。
ものすごく安心できる文章だ。


さわ女は本当に素敵に見えて、抱きしめたいくらいだった。