アメリカ感情旅行

アメリカ感情旅行 (岩波新書)

アメリカ感情旅行 (岩波新書)


著者が「どう受けとったかを語ったまで」という、
アメリカ留学記。


1960年11月〜61年5月までの半年間の、
アメリカ南部ナッシュビル滞在。

当時の黒人差別問題、アメリカ経済、中流階級の暮らし、
宗教、サーカス、人々との交流・・・

なんとなく憂鬱になりながら読んだ。
でも、とてもスムーズに楽しく読めたとも思う。

著者の肉体的な表現の仕方が素晴らしいと思う!
例えばだよ。


その言葉にはチューブの端を鉛筆に巻きつけて、
シゴき上げるような力がある


すごいね。
でもすごくわかる場面だった。
こはちょっと気味が悪くて不思議だけど、なんだか面白かった。
手品好きの親子の話、ちょっと面白いよ。

よそから来たけど、そこでしばらくの間普通の暮らしをする、
という間の物語がとても好き。
だんだんとみんなと親しくなって、そして離れるのが好き。




・・・・・・そうした何びきかのハエを、私は「アメリカのハエ」として記憶した部分がないとは言えない。こうした「部分拡大」の錯誤は短期間の旅行者には避けられないことだからだ。したがって私は、自分の「見たこと」や「ぶつかったこと」をあまり大きく考えすぎないように注意すべきだろう。しかし事実、見たものを見なかったとして考えるわけには行かないし、そんなことはすべきではない。むしろ私はハエの性質を、それを自分のこととして考えたい。私が、たとい何処ですごそうと結局、私は私なのだから・・・・・・。